私が学んだニューヨーク州のロースクールでは、Lawyering - 弁護士実務とでも訳すのでしょうか - という必修科目があり、その中で弁護士の実務に必要なリサーチの方法について学びました。
判例調査、法令調査、学術文献調査のいずれの場合でも、伝統的に構築されてきた調査のステップがあって、そのステップを丁寧に進んでいくことで、必要十分に調査を行い、求めている判例や法令や文献を見つけるという作業を学びました。いわゆるデータベースのキーワード検索とは、随分違います。
私がアメリカで法律を勉強した頃は、弁護士実務もアナログからデジタルに色々と変わっていく時代でした。ロースクールの授業では、伝統的なリサーチの手法を学びつつ、授業外でWestlawやLexisNexisの使い方を学ぶ機会もありました。
*****
最近ニューヨーク州で起きている話ですが、原告代理人がChatGPTを使用して判例調査を行い、その判例を引用した書面を裁判所に提出したというニュースがでています。
原告代理人が引用した判例を探したものの見つからないと被告代理人が指摘したところ、原告代理人が引用していた判例のいくつか(両手の指の数くらいはあるようです)は実在しないものだったとのことです。その原因が、なんと、原告代理人は、ChatGPTで判例を調査したからとのことでした。原告代理人は、ChatGPTが実在しない裁判例を生成するとは思いもよらなかったとのことのようです。
*****
弁護士の仕事は、そう簡単にはAIに取って代わられることはないと思います。けれども、将来がどのような世界になっているかは分かりません。自分にだからこそできる仕事を追求し続けたいものです。
なお、私が上記のニュースに触れたのは、先月のニューヨークタイムズの記事です。現在も係属中の事件であり、裁判官が原告代理人への制裁を検討しているようです。
Comments